2021/03/10

87.生きる術

子供の頃、いろいろあって人付き合いが苦手になった。それは今でも変わらないのだけど、この仕事をしていて、そんな自分を少しだけ変えた考え方を見つけた。

他人に妬まれるような幸運を持っているなら、それを隠すのではなく、むしろその幸運を存分に利用して、それで得たモノを振り分けた方がより多くの人を幸せにできるはず。

もしあなたが誰かの迫害を受けているのなら、それはあなたがイレギュラーな可能性を持っているということ。

この世界には平均値に引き寄せようとする強烈な重力がある。でもそんな重力が届くのは地表のほんの薄っぺらい部分だけ。空を越え、宇宙に出れば君を押し付けるものなんて何もない。

勇気を出して、その空に向かって…ジャンプ!

2021/03/09

86.レルヒ祭

雪の多い時期は車で出勤しても駐車場に入ることができないので歩いて行く事が多かった。

毎年2月にはレルヒ祭というイベントがあり、夜7時から短時間だけ花火を上げるのが恒例となっていた。

帰宅の路、冬のキンと張り詰めた空気の中、雪の積もった水田は月明かりに照らされて一面深い蒼色の世界を作り出す。その間を抜ける道を歩いていると南西の空にこじんまりとした花火が打ち上がる。

「そうか、もうこんな時期になったのか」

あと少し、もうちょっと頑張れば春がやって来る。

2021/03/08

85.石素材

よく聞かれるのだが、石素材の仕入は形を選ぶ事ができず、指定できるのは大まかなサイズだけで、あとは神頼みである。

だから理想通りの石が届くこともあれば、道端に置いても誰も見向きもしないクズが届く時もある。仕入単価は重量計算なので、これが形状によって異様な価格差を生む要因になっている。

そんな時、かなりイレギュラーな形状の石が必要になった。通常では価値が無いような形状だけど、そこそこの大きなサイズでなければならず、サイズ指定だけで手に入る可能性はゼロに近かった。

通常ならクズ石ゆえ、それぐらいならストックの中から選ばせてもらえるのではないか?しかも会社まで直接行けばなんとかなるか?

車を走らせ、入口に到着して電話をかける「今、玄関の前の居るんですけど…」。

アッサリと門前払いされた、これが取引先に対する待遇か?まぁ、フェアと言えばそうなんだが。


2021/03/07

84.いらっしゃいませ その2

コンビニバイトでもう一つ気に食わないことがあった。それはレジで会計をする時、最後に性別と年齢層が書かれたボタンを押さなければならなかった事。

どういう年齢層の人が、どんな商品を好むのか?というデータ収集のためなんだと思うけど、見た目で勝手に性別と年齢を判断するという行為が失礼だし、なによりも面倒くさかった(つくづくダメなバイト店員だ)。

だから俺が押すボタンは「20代男性」だけ。ヒーローのシール付ソーセージや生理用品を買うのも全て「20代男性」。そのコンビニは夜22時から翌朝6時まで20代男性しか現れない。

言わずもがな、そのコンビニはもう存在しない。

2021/03/06

83.いらっしゃいませ その1

「いらっしゃいませ」という言葉は後半の10年、もしくはそれ以上使ってこなかった。

そう考えるようになったのはコンビニバイト時代で、「いらっしゃいませこんばんは!」「ありがとうございました、またお越しくださいませ!」というガチガチのマニュアル挨拶に違和感を感じたから。

お客側からしても、そんなマニュアル挨拶をされても全く心に響かないし、店側にとってもメリットは感じなかった(おそらく防犯目的とかもあるんだろうけど)。

だから途中からマニュアル挨拶をやめて自分が好きなように挨拶をしていた。逆に気に食わないヤツにはマニュアル通りの挨拶しかしなかった(そういうアホな店員のためにマニュアルがあるんだ)。

セブンスでは「こんにちは」とか、顔見知りの人だったらもっとラフな挨拶を続けた。もちろん気持ちが込められている本当の挨拶。

普通であれば正面から「こんにちは」と言われて無視するような人はいないけど、店だとスルーする人もいる。そういう人はよっぽど接客されたくないんだろうと判断した。そういう意味でも便利な挨拶だった。


2021/03/05

82.笑顔

自覚が無いのだが、俺はいつでも笑っているらしい。

中学の時も先生の説教中に笑っていたみたいで、いきなりビンタされた事もあった。もちろん、そんなつもりはなかったから納得できなかったし、そんな自分の顔が本当に嫌だった。

まだセブンスを始める前の下積み時代。バイト先の先輩から「お前のその笑ってる顔は後々有利に働くことになるから」と、初めて肯定された。

自分で言うのも変だけど、今思えばその通りだったと思う。

いつの間にか作り笑いに変わっていたけど…。

2021/03/04

81.辞める理由

長く店を続けると多様な人生模様に触れることになる。

その中で突然アクアリウムを辞めるというパターンは、その人に何か深刻な事が起きていることが多い。

それまで何年も楽しそうにエビを買っていた人から突然「機材を引き取ってほしい」という電話があり、ご自宅に伺うと寝衣姿で迎えられ、この時点で理由を聞くのを止めた。

きっと機材だって手放したくはないはず。それでも「全部持って行ってください」という言葉に返す言葉が見つからなかった。

帰り際にこれまでのお礼の気持ちを込めて「頑張ってください」とだけ伝えた。あくまでも俺の憶測だから、この言葉が的を得ているかは分からないけど。

その人の一番のお気に入りだったホワイトのレギュレーターだけはそのまま保管してある。それが俺にとっての希望でもあるから。