2017/02/04

ただいま!

ただいま!本日無事にリスボンから帰還いたしました!20年分の振替休日とお伝えしておりましたが、そういう事だったんです。ゆっくり休んでね声をかけていただいたのですが、逆に過去最大のハードワークでありました。ごめなさい、騙すつもりではなかったのですが、一応防犯上ネット上では伏せておりました。

お詫びに貰ったiPadで書き溜めてきた「いい石出してるツアー」最新作の原稿をそのまま超速公開いたします。まだ修正前なので文脈もグチャグチャだし、誤字脱字もありますが、それも含めて楽しんでちょうだい!

ーー超速公開ここからーー


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フライトデータによると今は北海道上空を飛行中のようだ。連載開始から20年、ついにツアーは海外へ!

2017130日、日本時間17時。俺は今ポルトガルのリスボンに向かっている、ADAが企画した史上最強のイベントに参加している。そう、進行形なのは今回の原稿は可能な限りリアルタイムで書くつもり、だからこの先何が起こるのか見当もつかないし、文章もまとまらないかもしれないけど、一緒に旅をしているようなドキドキ感を共有できれば何よりだ。

まずはこの旅に挑む事になった経緯を説明しておこう。たしか5月前ぐらいだったと思うけど、ADAから「ポルトガル・リスボン水族館見学ツアー参加者募集!」なる通知が届いたのだ。参加は特約店関係者限定、全6日間の日程で負担費用は○○万円。いやいやいや、全然無理でしょう、6日間の休みなんて到底確保できないし費用だって先月買ったポンコツニュービートルよりも高額だし問題外だねとその時は思っていた。

それから数日後、冷静に考えるにつれて一つの事が引っかかるようになってきた。2016年に地元の水族館にネイチャーアクアリウムの展示を嘆願する署名活動を私が中心になって展開したのだけども、多くの人に協力してもらったにも関わらず実現できなかったのだ。その頃は署名してくれた人に本当に申し訳なくて、しばらく落ち込む日々が続いた。
だからせめてもの報いとして、市民団体を立ち上げて10年、20年先の次の世代のための礎を築いてゆく活動を始めた。そんな活動の一環としてこのリスボンツアーが役に立たないか?と。

まだ決断に至っていない頃、ADA本社で行われたネイチャーアクアリウムパーティに出席。そこで知り合ったスペイン人のヤゴ氏との出会いが俺の心を突き動かした。彼の話によればヨーロッパも含め、世界的に見ても水族館で創造性の高い水槽展示が少ないと、そして彼も同じ目標のために努力しているのだと。

「世界は無理として、日本は俺がやるしかねぇな!」と、根拠もなく立ち上がったのであります!

だってさ、世界一の水族館を視察するわけでしょ?地元の行政関係者だって行ってないと思うよ。仮に行ってたとしてもコッチは完全自腹ですからね、これほどクリーンな視察は無いって話ですよ。この先の強力な武器になる事は間違いないね、よし行こう!リスボン行ったる!

と、意気込んだものの、休日確保と費用捻出をどうするか?店はもう 誰にも任せられないから仕方がないとして、水槽のメンテナンスを請け負っているクライアント様の許可が必要だ。だって、その6日間の間にトラブルが起きてもどうにもならないからね。でも、事情を説明したらどのオーナーさんも快諾してくれた、逆に「絶対行くべきだ」とゲキをもらったぐらいだ。
残るは参加費用、こちらは経営用の予備費や消防団の活動報酬などをかき集めてどうにかクリア。

まだまだ問題はあるぞ、パスポートの期限がとっくに切れてるから再取得しないといけない。前回海外に行ったのは専門学校時代の修学旅行以来、もう20も前の話だ。熱帯魚屋を始めた後に海外に行くなんて考えもしなかったからね。
市役所に行って再申請、期限はもちろん5年。それでも発行手数料が重くのしかかるくぅ、たった1回の海外遠征のためなのに。しばらくムダな買い物を控えねば。

そして、大きな問題がもう一つ。俺は英語が全く話せない、サイコロ振れば誰でも受かると言われていた英検4級を真剣に回答して最低ランクで落ちた実力だ。別に今回は団体旅行なので英語必須ではないのだけども、ヤゴ氏と話した時にその必要性を痛感したのだ。その時の会話はどうしたって?当然通訳をお願いしましたよ!

だがもう俺に英会話学校の学費を払う余裕は無い。そんな哀れな俺を神が見ていたのであろう、水槽のメンテナンスに行ったお客さんが、あの有名なCDを持っていたのだ!
さっそく翌日から営業中に聞きまくった、1ヶ月間聞きまくった、1話の再生回数は100回を越えたするどうだ!?吹き替えなしの映画が全然聞き取れねぇ!
何だよこのCD、インチキなんじゃねぇの?
マズイ、出発まであと3ヶ月しかない、何か別の手段はないか?そこで見つけたのが10年も前に発売されたニンテンドーDS用の英語学習ソフト、価格は400円。コレに賭けるしかない!

今度は営業中にだけでなく、休みの日は家でも勉強した。大晦日も正月も欠かさずに毎日続けた。そしてさっき答えてやったぜ。

 「チキン オア ビーフ?」

ビーフプリーズ!(誰でも言えるわ!)

これでも頑張ったんだから許してよ、今までの俺じゃソレ言える度胸すらなかったんだからさ。

まぁ、そんな状態だったのだけども無情にも当日を迎えたってわけ。朝は8時に上越妙高駅から新幹線で東京へ。いつもなら東京へは片道6時間の格安夜行バスで行くのだけども、この先飛行機で17時間も座り続けるらしく、足せばほとんど24時間でしょ?自律神経崩壊なんてモンじゃないですよ。なので、仕方なく新幹線なんです快適だった。

10時には東京に到着、そこからモノレールに乗り継ぐと次第に空港施設が見えてきた。おぉ、これが羽田空港か、スゲェ!

集合時間まで余裕があったので、展望デッキに行ってみた。マジか!?新潟じゃぁ1時間に1本飛ぶかぐらいなのに3分に1本ペースでそこら中から飛行機が飛び交っている!あぁもう、この時点で次元が違う、今そこにいる自分が信じられない。

ややゲンナリした状態で集合場所へ、そこにはもう業界の重鎮達が集まっていた。俺がこのメンバーと一緒に居て良いのだろうか?いや、むしろ光栄に思うべきだ、何といっても今回は同志なのだから。

荷物を預け、出国手続きをする。あの金属ゲートも無事に通過し、いよいよ搭乗ゲートへ。空港会社はドイツのルフトハンザだって、カッコイイ〜!けど知らねぇ。

もう後には戻れない、やるしかない。でも、ちょっと帰りたい。そんな俺の気持ちをへし折るかのように飛行機は飛び立った。

で、ここまでその機内で書きました。現在日本時間で2030、まだ離陸から5時間かしんどいよぉ。


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現在131日現地時間430分、こんな時間にも関わらず全く眠くならない。そして日本は1330これが時差ボケというものなのか?ここまで時差のある国へ行ったことがないので定かではないが、緊張のせいで眠れないという質とは全く違う感じ。明日もハードなので寝なきゃいけないは分かっているが布団の中で考えた末、1時間だけこの原稿を書くことにした。それでは、第1章の終わりからここまでの経緯を話そう。

飛行機の中で1章を書き終えた後はもう何もする事がなかったので、目の前にあるモニターで映画を観ることにした。まずは「ボーンアイデンティティ」ラストまで観ても2時間も経ってない。次は「君の名は。」まさかこんな所で観られるとは思ってもいなかった、タダで観られてラッキー。だが、この二本立てが終わってもなお到着予定まで2時間を残していた。
日本ならそろそろ夜明けかなという頃、カーテンの奥から料理の匂いが漂ってきたまさか!?

本日2回目の機内食登場、1回目は日本の夕方ぐらいだったけど、まさかこのタイミングで出してくるとは!しかもガッツリのラビオリグラタンである。徹夜明けの早朝にグラタンなんて高校生レベルだよ、夏休み中の早朝ファミレスかよ!?

まさかの早朝格闘を終えた頃、ようやく着陸に向けての準備が始まった。離陸から12時間、これほどの戦いは過去にない。

ドイツフランクフルトに到着!まだ乗り換えなんだけど少しでも地面を歩けるのが嬉しい。しかもドイツといえば愛用のエーハイムとフォルクスワーゲンの母国である。「俺は今、ドイツの空気を吸いながら、ドイツの地を踏んでいる」全然実感湧かないんだけど、とにかく感動だ。
ユーロ圏なので、ここがいわゆる入国手続きという事になるんだろう。乗り換え手続きの途中であの検問みたいなやつが現れた。質問の内容は決まっているし、一度あの「観光です」ってのも言ってみたかったし、順番が回ってきて俺の担当は若い女性だったのだが、パスポートを渡すなり明らかに俺の事を不審に思っている表情をし
俺の風貌で、さらにマスクをしていれば怪しいのは認めるけども、それにしても嫌な沈黙が続き、つい目をそらしてしまった時に突然「アー ユー ファイン?」と聞いてきた、えっ!?そんな事聞くの?動揺してとっさに「アイム ファイン」と言ってしまったのだが、その時の俺が相当不機嫌そうだったらしく周りのメンバー含めて大ウケ、そこで入国審査終了。なんだよそれ、全然納得できないんだけど?一気にドイツのイメージが悪くなったのは言うまでもない。

ユーロ圏というだけで互いを近く感じてしまうのだけども、ドイツからポルトガルまで飛行機で3時間もかかるらしい。まぁ、さっきの12時間よりはマシだから頑張ろうと乗り込んだらけっこうボロい、国際線とここまで違うか?エンジンも左側だけメカノイズ出てるんですけど大丈夫か?なんて心配をよそに飛び立った。

さすがにもう寝てるだけでいいや、到着まで休もうと思っていたら再びカーテンの奥から料理の匂いがしてきた。ウソでしょ?3時間のフライトで飯出すの?しかもメーニューは再びラビオリ半分食ったところでギブアップした。

その後はもう気絶状態だった。目がさめると窓の下にはオレンジ色の夜景が広がっていて、ついに着たんだなと実感する。上空から見る限りリスボンの街灯は全てオレンジ色で統一されているようだ。そういうのって良いよな。

現地時間3023時、日本は31日の朝8時、新幹線乗ってからちょうど24時間だよ。ちょっとした拷問だよ、もうクタクタだぁ。

ホントは感動に浸りながら移動したかったけど、そんな余力もなくホテルへ連行。明日のためにすぐにでも寝なきゃと意気込んでたら「そこのバーで一杯飲もうぜ!」と、マジか?重鎮ハンパねぇな。ここは聞かなかった事にしてスルーしようかと思ったのだがいや、どんな事でも首突っ込まなきゃ男じゃねぇ!と参戦、ナイスガイのバーテンとの会話も楽しかったが、やっぱりしんどいわぁ。

部屋に入って風呂を済ませたのが午前2時。7時まで5時間寝られるなと布団に入って現在6時前。全然眠くありません。今日はリスボン水族館だよ、大丈夫なのか?


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今日が何日で日本が何時なんてもうわからない、とにかくコッチは夜中だ。もうすぐ午前1時になる。調べてみたら日本は水曜日の午前10時のようだ、向こうはもう明日の半分が終わっているんだな。
お終わったといえば俺自身もだ。とにかく燃え尽きた、その話を辿ろう。

あれから強引に寝ようとしたが30分も休めていなかったと思う。7時のアラームが鳴って、すぐに近いのラウンジで朝食。これが意外に美味かった、同席したメンバーとこの飯が今日のピークだったりしてなんて言っていたのだが、それが現実になろうとは。

その後バスに乗ってリスボン水族館へ向かう、道路渋滞が酷かったがこれでもマシな方らしい、所々で工事が行われているので道路事情も良くない。もっと良くないのは天気だ、朝からずっと強い雨が降っている、聞けばリスボンは年明けからほとんど雨が降っていないらしい、なのに今日に限ってこの天気とは

もちろん今日のメインは「水中の森」を見ること。だけどそれともう一つ、館長さんとの握手写真を撮ること!これは我がC.A.O.にとって心強い存在になる、この二つは今回の旅の重要度のほとんど占めるので、不安で仕方がなかった。不眠の元凶かもしれない。

今回は特別に通常10時の開館時間よりも30分早く入場してバックヤードを見学できる。朝の閑散としたチケットブースを抜けて白いらせん状の階段を上ると展示フロアの入場口が現れた。もうこの時点で参加メンバーが様子が一変、かなり高ぶっている、改めて同類の人間なんだなと思った。

薄暗い回廊を何度か曲がると水槽の最右部が見えてきた、ストーリー性を重視しているのか?だが最右部の前に立てば中央部を合わせた全景が一気に広がる!
早速堪能したいところだったが、バックヤードは最初の30分しか見ることができないので水槽の上に行くための階段を上る。全長40メートルの水面が続く、波打つ水面下に見えるのは水草の群生と悠々と泳ぎ回る魚群。

  「これはもう川だな」

俺が最初に上げた声がソレだ。そう思えるのは規模の影響もあるけども、水槽の上に視線を遮るような補強や機材が無く、まるで川縁に立っているような気持ちになる。上から見るってのも良いね、バックヤードにしておくのはもったいないんじゃないかな?
水槽の裏側のろ過システム等は天野邸の水槽と同じような手法だった、この辺りはすでに確立されているようだ。ポンプはデカかったけどね。

通常の開館時間になってバックヤードから通常のルートに戻り、いよいよ全景を拝見する。フロアには階段状になっている部分があり、そこに座ると一望出来るようになっている。当然だと思うけど、写真で見るのとはスケール感が違うし、奥行き感も違った。水槽の末端がちょっと霞んで見えるって常識じゃ考えられないでしょ?
この規模なら引いて見るものなんだろうと思っていたんだけど、顔をアクリル面ギリギリに近づけると不思議な感覚に変わる。説明が難しいんだけど、自分が30センチぐらいの人間になって、ギャラリーにあるような180センチ水槽に自分が入っているような感覚。
写真で見ていた頃は大味な造りなんだろうなと想像していたんだけど、意外とそうでもなく近くから見ても楽しめるのだ。これは意外だった。

う〜ん、よくデキてるなぁ。どこかマイナス要因はないかと改めてネガティブな目線で見てみたけど、石、流木そして葉の表面、どこにもコケ一つない。凄いメンテナンス力、あっ!そうか、ウィローモスがどこにも無かった、流木も全部地肌がむき出しだったな。コケが無いのと何か関連があるのだろうか?

それにしても座りながら無心に眺めたり、水槽の前でポーズをキメて写真を撮ったり、皆んなで思い思いに楽しんだ。巨匠成りきり撮影会も楽しかったなぁ、こんな水族館が日本にあれば良かったのに

その後、本館を見学。施設の中央には500万リットルを超える容量の超巨大なメイン水槽が設置され、世界の海を再現している。最近の日本の水族館はご当地アピールに躍起になっているけど、テーマは「世界」なぜなら地球上の全て海は繋がっているのだから、という懐の深さが好感を持てた。

どの展示も手抜きがなく、水槽の大小に関わらずしっかりと作り込まれている。もっと時間があればじっくりと楽しみたかったのに残念だ。自由時間だったので家族へのお土産を探してみた、広い物販コーナーで買い物を楽しめるようになっており、店員の目が気になりながらも物色してみたが、どれも悩むような価格設定なのだ。手のひらサイズのぬいぐるみで2,500円(ユーロ換算)とか相当に舞い上がってなきゃそんな値段で買わないだろ?と思いながら何か手頃な値段の物はないかと探した結果、文房具コーナーを発見。鉛筆11.5ユーロ…200円ちょっと?タミヤの鉛筆なら1ダース買えるが感覚を切り替えよう、他にボールペンなどを織り交ぜてレジに持って行ったら合計で38ユーロゴ、ゴセンエン!?文房具だと思って甘くみてた「ビ、ビザカードでお願いします」。

この日の昼食は水族館内のカフェのような店だったのだけども、この辺りからあまり馴染めない料理の「味」が出てきた。言葉での表現は難しいけど、たぶんこの国独特の味、とういうか匂い。ホテルの朝食はとても素晴らしく、何の問題もなかったのが余計に影響したのか、この日の昼食で食べてパスタでソレに気づいてしまったらしい。
スープを一口う〜ん、続いてパスタあぁ、コレは。まだ残り3日もあるのに。

残る使命は館長殿との記念撮影、これは運の良いことに全員で1ずつ撮ろうという展開になったので難なくクリアできてしまった。できれば水族館に関する事を色々聞きたかったのだけども叶わなかった。俺にもっと語学力があれば可能性があっただけに悔やまれる、市民団体としての俺は本当に頼りなく、ちっぽけだ。

名残惜しいけど水族館とはここでお別れ。そして、まだ書き終えていないのに第3章もここまで。朝4時半に目覚めてから書いていたけど、そろそろ3日目の準備をしなきゃ。

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今はバルセロナ発、フランクフルト行きの飛行機の中。なんと出発が1時間近く遅れてしまい、今も滑走路上の機内で待たされている。下手すりゃ乗り換えもできないかもしれない、最後にして波乱の予感である。

いきなり最終日に飛んでしまったのは3日目からよく眠れるようになって、書く時間がなくなってしまったから。たぶん時差ボケが解消されたのと疲労の極限が重なったからだと思う。体調も幾分か良くなったし。それでは続きを語ろう。

水族館での玉砕ショックで立ち直るまでしばらく時間がかかった、メンバーの中で俺が急に無口になったのを気付いた人はいただろうか?

空は俺の気持ちを察したのか雨脚は一層と強くなり、その後のリスボン観光は傘をさしながらの行動となった。向かったのはたしかバスコダガマ(ここから先の教養的な内容は信用しないでほしい)が建てたデカイ教会、当時コショウを原価の50倍近くで売りさばき、巨万の富を得たというボッタクリ商売の第一人者である。たしかにデカイし荘厳なんだけども、いかにも「豪華に作りました」という見え透いた傲慢さが俺には全くヒットせず、ヴィンテージか?といえば、それも限度を越えて古すぎ。関心ありそうな顔して解説を聞いていたけど、実は退屈で悶絶していたりする。

どうやら離陸らしいので、続きは後ほど。

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慌ただしい乗り継ぎとなったが、無事に予定の便に乗ることができたので、羽田までの12時間内に仕上げてしまおう。

巨大な教会の後も遺産ツアーが続く、時折の救いはクールにパッケージされたバスが何気なく船着場に置かれていたりして、ユーロ圏のセンスの良さを学ばせてもらった。

なお、ポルトガルでのガイドさんはガイドブックの編集や、ポルトガルを取り上げたテレビ番組の監修を務める等、裏方ではあるものの、その道では超有名人らしい。だからガイドに関しては面白いぐらいで退屈なんかしないのだ、あくまでも退屈はその対象物に対してである事を付け加えておく。

夕方5時から夕食が始まる7時まで時間に余裕があるということで、希望者のみ市街地散策をするという事で迷わず手を挙げた。ただし、名所ではあるもののスリの被害が頻発するらしく、それなりのリスクがある。ゆえに希望者はたったの4名、それとADAスタッフ2名が加わり6人の精鋭でスリの巣窟へと飛び込んで行った。

空は夕闇に包まれ始め、まさにスリにとっての格好の時間帯なのかもしれないが、街灯の灯り始めた市街地は何とも言えぬ異国情緒を醸し出し俺達を魅了した。360度どこを切り取っても絵になってしまう「いかにもヨーロッパ」の様相は、存分に俺達を楽しませてくれた。

おかげで気分の落ち込みも幾分か軽くなり、このツアー最初の本格的な夕食を楽しむことができそうだ。この日のメニューはバカリャウと呼ばれる鱈の塩漬けがメイン、ちょっとだけ事前に学習した知識によればバカリャウはこの地区のソウルフードで一度は食べてみたかった、そしてもう一つはサングリアという赤ワインベースのカクテルとでも言えば良いか、すでに日本でも流行っているが、やっぱり本場の味を堪能したいのでオーダーした。

まずはサングリアで乾杯!想像よりも少しハーブが効いているみたいだけど、新鮮な果物がふんだんに入っていて美味かった。そしてサラダの次に出てきた特大の白身魚の切身、これぞバカリャウ。こんがりとソテーされて美味そう、念願の実食!

 「ウッ

あの味だ、昼のパスタ程ではないが観じる、しかもかなりの塩分。まいったなぁ、食えないほどではないが完食は厳しいか?見渡せばどの席も似たような状況、唯一の完食はポルトガルに常駐派遣されているADAスタッフすがである。

箸が進まない分、酒が進んでしまった。酔いしれた私の前に出てきたデザートは見た目プリンで美味しそう。早速いただきま

  「ヴッ!」

甘いなんてもんじゃない、激甘。砂糖が飽和状態まで溶かし込まれている。ポルトガルはいかなる調味料も飽和状態になるまで使わないといけないのか!?さすがに完食は誰もすでにあのスタッフの器が空になってる!明日にでも血液検査した方がいいぜ。

イマイチ腹の調子が良くないが、続いて本来の予定にはなかった「ファド」というバーへ行くことになった。ファドとはなんぞやと思ったが、行ってみると生歌を聞きながら飲める雰囲気の良い居酒屋のような所で、長い歴史があるらしい。時折定番の曲を演奏するらしく、常連客を交えての大合唱が繰り広げられてた。終盤は俺らも巻き込まれていた。

あまりの具沢山な1日ゆえ、疲労困憊でホテルに帰ってきた。この二日間で1時間しか寝ていないし、これだけ疲れていれば時差ボケなんて関係ないだろうと期待してベッドに入った。

まだ目覚ましアラームは鳴ってないけどスッキリと目が覚めた、えっと時間は…3時半!?まだ余裕じゃん、再びベッドに入って1時間全く眠くない。仕方ない、日記を書こう。

観光2日目、この日は特に俺にとって何も使命はないので存分に旅を満喫できそう。この日はリスボンから少し離れた地区の田舎町見学、イナカとは言うものの手が加えられていないリアルリスボンというべきか、情緒のある路地の雰囲気が最高、まるで絵葉書の中に迷い込んだみたいだった。ただし、例によって古すぎる遺物を見た後の話だったが

そしてまたリスボン地区に戻り、芳香剤のCMの舞台となった高台の公園で記念撮影。それにしてもリスボンは高低差が大きく坂も多い、飯はイマイチだが、街の雰囲気は本当に抜群だ。

生活感も味わうという事なんだろうか?リスボン築地とも言えるような市場の散策もあった、買ったものをその場で食べられるシムテムなので、ここで昼食かと思いきや昼食はダイニングバーのような店で、ブイヤベースのような料理を堪能誰もが「やっぱりね」いうリアクション。俺はもう何も食べたくない。

なんとこんな不完全燃焼の状態での全日程が終了してしまった。名残惜しいんだか惜しくないのかわからないけど、とにかく一行は一路スペイン、バルセロナへと飛んだのである。

隣の国だけにすぐに行けるような気がしてたけど、飛行機で約2間、搭乗手続きなんかを含めると3時間はかかる。さらに時差が1時間あるゆえ、ポルトガルを午後4時ぐらいに出てもスペイン着は9時過ぎ、夕食は10時からというヘビーな行程だった。

寝不足や疲れ(食い物も?)そして緊張、いろんなものが重なったんだろう、俺にとってこの日の夜が疲れのピークだった。できればその日の出来事を書き納めてから寝たかったのだけども、倒れるようにベッドに横たわってしまった。

目が覚めて時計を見ると7時手前この旅で初めて寝る事ができたようだ、やっと時差にも慣れてきたのかもしれない、翌日には帰路に就くんだけど。今日は「スペインにいる知人」に再会するのだ、そう書くとすげぇカッコイイ。

リスボンのホテルはやや郊外にあったけど、バルセロナのホテルは市街地あり、ビジネスホテルのように目の前が通りに面している。出発の時は朝のラッシュと重なり、ホテルも前の道はクルマとバイクが混在した濁流のようになっている。温かみのある田舎っぽいポルトガルとは対照的にバルセロナは殺伐としているが、それがまたクールで良い。アメリカ文化の原型を目の当たりにする事ができそう。

何と言ってもスペインならサグラダファミリアである、建築に興味がなくともその存在を知っている人も多いと思うが、建築ファンの俺にとってはもはや聖域、死ぬまでに肉眼で見られるとは思ってもいなかった。市街地は78階のビルで埋め尽くされているのでバスの中から周りを見渡す事はできない、そんな中で一瞬の切れ目から天空に突き出た塔が見えた。スゲェ

少し離れた所でバスを降り歩いてゆく。まだビルに隠れて全体像は見えないが、そのスケールは十分に伝わってくる。そして正面に着いた時、俺はもう言葉を失っていた。

今まで見てきた人工建造物の中で、ぶっちぎりの最高傑作だね。その様相を言葉で表現する事はもはや不可能「全宇宙全ての生命体がグチャグチャに混ざり合った塊」俺のボキャブラリーではこれが限界。

外見だけでも気絶しそうだったのに、中に入って完全に昇天した。大木を思わせるような石柱が立ち並び、遥か上空の天井からは優しい光が降り注いでいる、まるで森の中にいるかのようだ。ビジュアルは完全に人工物なのに、無機的なストレスを一切感じない。

パイプオルガンが奏でる音色は、複雑な形状をした天井に反響されて体内に染み渡るようなサウンドである。この状態でキリスト教に誘われたら俺は入信してしまうだろう。

怪しい勧誘には誘われなかったが、幾つかある塔の上を見学できるオプションには参加した。あの建造物にエレベーターってのはどうかと思うが、グ〜っと上った先で降り所は外から見た塔の2/3ぐらいの位置、それでも十分に市街を一望できるし、何よりも窓も一切無い石造りの建造物がこんな高さまでそびえ立ってるなんて信じられない。

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結局飛行機の中で書き終える事ができず、ここからは北陸新幹線内にて。

塔の見学コースはエレベーターで上った後、自力で階段を下りながら見て行く順路だった。随所にある窓(というか穴?)からは別の塔の彫刻や装飾を間近に見る事ができる。最後は高さ30メートルはあろう螺旋階段を下って行くのだが、螺旋の中心が下まで抜けているのだ。ボールを落とせば下まで落ちる、当然人間も落ちる今まで何も起きなかったんだろうか?

残りわずかな見学時間は1人で再び館内に戻り、夢の時間に浸らせてもらった。俺が生きている間に完成したならば再び訪れてたいが、どうやら大人の事情で永久に工事が続くらしい

昼食はなんとサグラダファミリアから道路を挟んでの向かい側、なんとも贅沢な立地のスペイン料理店。大鍋で炊いたパエリアが登場したのだが、例によってあのテイストなんだろうと諦めながら一口う、美味い!この店やるじゃねぇか、立地条件だけじゃないなこりゃ。久し振りに完食、朝食以外ではコレが1番のアタリだった。

この日はまさにガウディ三昧、次は彼が手がけた有名な公園。これも行ってみたかったんですよ(公園の名前知らないけど)、園内にある石柱やベンチは一見奇抜なんだけど、不思議と自然に溶け込んでいる。何よりもその本物に触れる事ができ、座る事ができる、もう超感動なんですけど(リスボンとのこの温度差はいかがなものか?)。

その後も彼の設計したアパートメント等を見る事ができて大満足。だが、この日の最も大事な使命はこの後のADAスペインへの訪問だ。ここのCEOであるヤゴ氏とは過去に接点があって、以前のネイチャーアクアリウムパーティで少しだけお話をする事ができた。でもその頃の俺は全く英語が話せず、全ての通訳を介しての会話だったため、今回は直接対談に挑戦すべく4ヶ月間コツコツと独学で勉強してきたのだ!

到着後、早速登場したヤゴ氏を前に某CD教材で習得した挨拶をぶちかます!おっ?ちゃんと通じてるっぽいじゃん?だけども、そこから先の会話に教材は通用しない、流暢な挨拶からいきなり出川イングリッシュに切り替わる。

この4ヶ月間は人生の中で最も真剣に勉強したってぐらい努力した、それでもコレが精一杯だ。でも、俺が4ヶ月間で習得したのは壊れた英語でも話しかける勇気と、その楽しさ。実際に俺はこの旅でできるだけ多くの人と話そうとチャレンジしていた。現地ガイドはもちろん、飛行機の隣の席の人とか。当然誰ともスムーズになんて話せないけど、お互いでなんとか伝えようとするそのやりとりが楽しくて、分かり合えた時は例外なくお互いが笑顔なのだ。まぁ、いつかは完全にマスターしてやるけどね。

本日の観光日程はここまで、夕食までの約3時間はフリータイムだそうだ。一応団体旅行なので単独行動は許されないと思っていたが、まさかのオッケー。やったぜ、3時間限定だけどバルセロナで一人旅が味わえる!

解散の掛け声と同時に俺の姿はバルセロナの雑踏の中に消えた。


ーーここまでーー

残念ながら超速公開はここまで、まもなく上越妙高駅に到着です。おかげさまで無事に帰って来られました、ありがとうございました。
なお、完全版はさらに内容を充実させ、タップリと撮ってきた画像満載にて後日公開いたします!
5日より通常営業、旅の報告はもちろんですが、ニューフェイスも登場予定。しばらくは英語勉強もお休みして遊び倒します!

セブンスでお待ちしております。