2018/10/26

今でも「署名したかった」という声が届いております。ありがとうございます。

鳴かないホトトギスを殺すという武将の例えがありますが、気に食わわない鳴き方をする鳥も殺されるような国があるようで、自由の意味を改めて考えさせられております。

3年前に多くの方々に協力していただいた水族館にネイチャーアクアリウムの設置を嘆願する署名活動について、詳しい結果の報告が行き届いていないというご指摘がありました。店頭やフェイスブック上ではある程度お伝えしていると思いますが、たしかにこの場では書いていない気がします。

長文になるとは思いますが、時間が経って考えが整理できた分も含めて書かせていただきますので、ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。

あの時は本当に多くの方に協力していただいて本当にありがとうございました、署名活動を先導するのは初めての事でしたが皆様のご協力がなければ成し得なかったと思います。結果から言って私達が要望した事項については1パーセントも受け入れてもらうことができず、そのまま今年のオープンを迎えることになりました。

それも全て私の責任。計画性から提示案の脆弱さ、プロジェクトを進める上での戦略性も完全に裏目に出てしまいました。もしかしたらわずかな芽があったのかもしれませんが、それを摘んでしまったのは間違いなく私です。本当にごめんなさい。

8年ぐらい前の事だったと思いますが、縁があって旧水族館施設で180センチの水槽を任される事になりました。私はこの機を利用して今後リニューアルされるであろう新水族館(この頃はまだ決まっていなかった)にネイチャーアクアリウムを設置してもらえるように進めてみようと考えました。

仕事として契約すると内容に制約が出そうな気がしたので完全ボランティアという事にして、そのかわり私の好きなように水槽を使わせてもらえるようにしました。その時も照明器具の作成などには予算削減のために地元企業様に協力していただきました、ありがとうございました。

当時の旧職員様は手間がかかる上に枯れる水草なんて止めたほうがいいという考えのようでしたが、二酸化炭素を添加した王道のネイチャーアクアリウムを実際にご覧になり、他の水槽でも自然観のある展示方法にするべきだという職人魂に火がついて雰囲気が盛り上がったのは良き思い出です。

私はこのままボランティアを続けてネイチャーアクアリウムの展示を続けていれば自ずと新水族館でも設置されるだろうと思っていました。こちら側から強引に要望して置くよりも、施設側が設置する意義を理解して、施設側から要望してもらえるのが最善だと考えていたからです。

ところが、その5年後に発表された設計図にネイチャーアクアリウムどころか水草水槽がどこにも載っていないことに愕然とし、どうにかしなければ火が消えてしまうと思い立ったのが署名活動でした。

その時すでに設計は最終段階に達していて、もっと早くから行動を起こすべきだと後悔していました。それでも私の提案に賛同してくれたアクアリウムファンのおかげで、たった1ヶ月という短い期間にも関わらず900人近い署名が集まりました。

その頃の意見としてはアクアリウムファン、そうでない普通の市民の人でも「えっ!?そういう水槽って無いの?」という声が多く、要望は確実にあるという事を実感しました。上越はもちろん市外から、近県からも要望があれば必ず何かが動くと、その時は自信に満ちていました。最後はカネの問題になるだろうと予想して、提案時には設備費は全て私が負担するとも伝えました。

署名提出の約2ヶ月後、私は市役所に呼ばれました。吐きそうなぐらい緊張しながらも、少しは可能性を感じていた私に突きつけられた言葉は以下の通りです。

・上越では前例がない
・私に実績がない
・上越に関連する展示物ではない
・すでに設計は変更できない
・私のブログ上での言動に問題がある
・水族館に設置する理由がわからない

項目にもありました通り、この場で個人的な意見は書けませんので皆様で感じていただければと思います。事実だけ伝えるとすれば、この半年後に「ピラルクの水槽だけ追加で設置する」という事案が話し合われていました。設置する理由は「市民からの要望が多いから」だったそうです。

一番ショックだったのは「どうして水族館に設置しなければいけないのか?」という問いに対して即答することができなかった事です。なぜなら今まで「存在して当然」だと思っていたので、理由なんて考えた事がなかったからです。実際に私は今までそれを楽しみにして多くの水族館に足を運んできましたし、水族館だからこそ可能な技術やスケールがあると思っていたからです。

その場でひねり出した答えは「多くの人に見て、楽しんでもらいたいから」と伝えたら「だったらイオンモールとかの方が良いんじゃないの?」と。嫌でした、雑多な商業施設に置くのには抵抗がありました。でも、その時はその理由でさえ分かりませんでした。

そしてブログ上での言動を指摘された時にこの計画の失敗を痛感しました。

それから2年ほど反省と、後悔と、訳のわからないネガティブな感情で押しつぶされそうな日々を過ごしました。結果を詳しく伝えなかったのも、この話を避けようとしていたからなのかもしれません。


最近やっと気持ちが落ち着いてきて、少しずつでもいいから責任を果たしていこうと考えるようになりました。市民がネイチャーアクアリウムのある水族館を望んでいることは間違いないので、今すぐではなくとも次の世代、もっと先の未来で夢が叶うような地盤作りをしていこうと決めました。

まずは指摘されたことを改善するのが先決で「前例、実績、関連、理由」この4項目を一気に解決できる方法として生み出されたのがクロスアーツプロジェクトなのです。公共が無理なら民間でやるしかありません、民間の力で10メートル規模のネイチャーアクアリウム水槽がある施設を作り、それを教育、福祉、地域活動等あらゆる分野で活用してもらいます。さらに芸術や観光分野にも利用してもらえば、いつか必ず上越にアクアリウムが根付いてくれる事でしょう。そこ頃には「どうして水族館に?」なんて疑問を抱く人なんていないはずです。

そして水槽の設置場所ですが、専用の施設を設けることがベストだと考えました。これは未来ではなく、すでに現時点で考慮しなければいけない事項ですが、魚類に限らず生き物に楽しませてもらう以上は、その生き物に対するストレスを限界まで軽減させられる設備と環境で飼育すべきだと。それが騒がしい商業施設に置くべきではない明確な理由です、さらに静かな環境であれば鑑賞する人間側もより深くアクアリウムから多くのことを学んでもらうことができるはずです。

過去のブログで「結果オーライは運ではなく、自分で生み出すもの」と書いた事がありました。失敗した時よりも、それを超える結果を目指すことが結果オーライなのです。いきなり10メートルの水槽なんて作れません、今はその地盤となる私自身の技術と人間としての器を磨いているところです。

そしていつか必ず「もう一度チカラを貸してください!」とお願いする時がやってきます。それを言うのはもう私ではないかもしれませんが、その時に夢は必ず叶います!