2020/12/03

25.食パン

赤字補填のためのコンビニ夜勤時代。バイトメンバーのうち半数は近くの大学生だった。

彼らは毎日の食費にも苦労しているので、廃棄になった弁当やパンを競うように持ち帰っていた。

そんな中、いつも食パンだけは残されていたので、もったいないからと食パンは私が持ち帰っていた。たしかに弁当や惣菜パンに比べれば味気ないけど、冷凍しておけば保存できるし、美味いものは若者に譲るのが大人の務めだしな。なんて。

そんな事が数ヶ月続いたある日、残っていた食パンに「相馬さん専用」というメモ書きが貼られていた。気が利くやつもいるもんだ、なんて感心していたら実は違ったらしい。

バイトメンバーのから見ると俺は食パンの猛者だと思われていたらしく、うっかり食パンを持ち帰ろうもんなら、いい歳こいたオッサンバイトがキレるから、食パンには手を出すな!という事になっていたらしい。

かなり恥ずかしい思いをしたが、とりあえず「こんな大人にだけはなるな!」と、言っておいた。