2020/11/15

13.ノルマ

開業から何年かは午前10から夜8時までという長めの営業時間を設定していた。

しかし、その10時間のうち8時間は何もしない毎日で、あてのないお客を待つぐらいだったら店内で内職でもやろうかという話になった。

仕事内容は粗品用のあぶらとり紙パックを作るというもの。数千枚という束になっているあぶらとり紙から10枚数え、折り曲げて組み立てた紙パックに入れ、さらにそれをビニール袋に入れる。たしか1個作って1.5円ぐらいだったと思う。

特にノルマはないのだが、事前に希望の個数を指定して材料を受け取り、納期までに納めるというシステム。

初めのうちは営業時間中に作っていれば十分だったのだが、たまに店が忙しい日が続くと家に持ち帰って作る事になる。

それが欲張ってノルマを増やした時と重なると最悪で、明け方まであぶらとり紙を作る毎日の上、手取りは1万円にも満たないのだから気が狂いそうになる。

あぶらとり紙の他に、使い捨ての靴磨きや、携帯電話の部品を作ったりしたが、結局半年ほどでギブアップ。

それ以来、広告入りのティッシュなんかを見ると、知らない誰かの苦労を思ってしまう。