2020/11/17

15.タチアゲ

セブンスをADA専門店に変えてからまもなくの頃、外国籍の若者がやってきた。

アメリカ出身であるという彼の話では、巨匠を尊敬するあまり、可能な限り近くに住むために来日し、とりあえず柏崎市に住まいを設けたらしい。

おそらく来日前から日本語を猛勉強してきたのであろう、若干のイントネーションのズレがあるものの、見事なまでの日本語ぶりだった。

そして念願の来日を果たし、いよいよ本格的にネイチャーアクアリウムを始めるべく、最寄りの特約店にハードウェア一式を買いに来た。というわけだ。

残念ながらその時点で全ての機材が揃わず、一部は後日発送という事に。住所を聞こうと思ったら自らペンを持ってスラスラと漢字で住所を書いたもんだから二度驚いた。

喋りの時点でも思ったが、コイツは本当にマジだな。むしろヤバいエリアに入りかけているかも?なんて逆に心配になったりしたが、それ以降10年ほど音沙汰が無かったので、当時の記憶も薄れ始めていたのだが…。

2020年世界水草レイアウトコンテスト、その世界ランク2位に彼の名は刻まれている。

一人の若者が、母国を飛び出して、頂点にあと一歩のところまでよじ登っているという現実に鳥肌が立った。やっぱりヤバいぐらいの情熱を持っていないと夢は叶わないんだな、とも思った。

そんな世界2位の彼に「タチアゲ」という言葉を教えたのは私。ちょっとだけ自慢。